はじめに

NISA(少額投資非課税制度)は、配当や譲渡益が非課税となるため、長期的な資産形成の中核として広く利用されています。
しかし、一部の証券会社では NISA口座で保有する株式やETFを「代用有価証券」として信用取引やFXの証拠金に充当できる仕組み を提供しており、これを活用することで「二重運用」とも言える戦略が可能になります。

本記事では、この“二重活用”の仕組み、メリット・デメリット、実際にどのような投資家に向いているのかを詳しく解説いたします。


NISA資産を担保にできる仕組みとは?

通常、FXや信用取引を行う場合は、現金を証拠金として口座に入金する必要があります。
しかし一部の証券会社では、保有中の株式やETFを「代用有価証券」として担保に差し入れることが可能です。

例えば次のようなイメージです:

  • NISA口座で VT(全世界株ETF)VYM(高配当株ETF) を購入して長期保有
  • それらの評価額を、FXや信用取引の証拠金に自動的に振り替え
  • 現金を別途用意せずに、余力として運用資金を確保できる

つまり、長期投資と短期運用を並行して行うことが可能になるのです。


メリット:二重活用の魅力

1. 配当金は非課税で受け取り

NISAの最大の利点は、配当金や売却益が非課税となる点です。
代用有価証券として担保に入れていても、配当金は通常通り非課税で受け取れるため、長期投資の恩恵は失われません。

2. 現金拘束を減らし、資金効率を高められる

現金を証拠金として寝かせておく必要がなく、NISA資産を活かして別枠の運用を行える点は大きな魅力です。
特にFXでは少額からポジションを持つことが可能であり、“資産を遊ばせない”効率的な資金運用が実現します。

3. 長期投資と短期運用を並行できる

NISAでは売買頻度を抑えた長期保有が基本ですが、一方で短期的な運用を組み合わせることで、異なる投資スタイルを同時に活かせるのが利点です。


デメリット・リスク

1. 追証リスク

担保にした株価やETFの価格が下落すると、証拠金評価も下がり、追証(追加証拠金)の請求が発生する可能性があります。

2. 投資戦略の複雑化

長期投資と短期運用を同時に管理する必要があるため、戦略や資金管理が複雑化します。

3. 証券会社ごとの制約

  • 利用可能な証券会社は限定的
  • 担保評価額は100%ではなく、70~80%程度の掛目が設定される
  • 対象銘柄や評価方法が証券会社によって異なる

リスク管理のポイント

  • 担保余力を常に確認:株価や為替変動で証拠金維持率が変わるため監視が必要
  • レバレッジを抑える:追証リスクを減らすために、低めのレバレッジを推奨
  • NISA資産は長期投資の軸として守る:短期運用で損失が出ても長期資産を崩さない
  • 証券会社の条件を比較:掛け目、対象銘柄、反映タイミングなどを事前確認

まとめ

NISA資産を担保にする「二重活用戦略」は、

  • 配当や売却益の非課税メリットを維持しながら
  • 資金効率を高め
  • 長期投資と短期運用を両立できる

非常に魅力的な手法です。

ただし、追証リスクや戦略の複雑さなども伴うため、十分な理解と管理を前提に活用することが重要です。
長期投資を軸に、資産を効率的に働かせたい投資家にとって、検討する価値のある戦略と言えるでしょう。