── 不安を煽らず、生活を守るための現実的設計 ──

精神科医として診療をしていると、
次のような相談を受けることがあります。

  • 保険にたくさん入っているのに不安が消えない
  • いざ休職したら「使えない保険」ばかりだった
  • 保険料が家計を圧迫している

ここで重要なのは、
「保険が多いこと」と「安心できること」は別だという点です。

この記事では、
精神科医の立場から見て
本当に必要な保険を、無理なく最小限にそろえる順番を整理します。


大前提:保険は「不安対策」ではなく「生活防衛」

まず押さえておきたい前提があります。

  • 保険は安心感を買うものではない
  • 破綻を防ぐための仕組みである

精神科医として見る限り、
「保険に入りすぎている人」ほど、
不安が強く、思考が整理されていないことが多いのが現実です。

重要なのは、
最悪のケースでも生活が壊れないか
この一点です。


STEP1:公的保障を正確に把握する

最初にやるべきことは、
民間保険を検討することではありません。

最低限、理解すべき公的制度

  • 健康保険(高額療養費制度)
  • 傷病手当金
  • 障害年金
  • 遺族年金

これらを知らずに保険を増やすと、
同じリスクに二重でお金を払うことになります。

精神疾患では特に、

  • 傷病手当金の期限
  • 障害年金のハードル
    を冷静に把握することが重要です。

STEP2:「働けなくなるリスク」への備えを最優先

精神科医の立場から、
最も優先順位が高いのはここです。

なぜか

  • 死亡より発生頻度が高い
  • 回復までの期間が読めない
  • 生活費の不安が症状を悪化させる

したがって、
最初に検討すべき民間保険は

所得保障保険(就業不能保険)

です。

特に、

  • 自営業・フリーランス
  • 貯蓄が十分でない会社員
  • 精神的負荷の高い職種

では、優先度が非常に高くなります。


STEP3:家族がいる場合のみ「死亡リスク」に備える

次に考えるのが、
自分が死亡した場合の家族の生活です。

ここで選択肢になるのが、

収入保障保険

精神科医視点では、
これは次の条件がそろった場合に限定されます。

  • 扶養家族がいる
  • 自分の収入が家計の大部分を占める
  • 子どもが小さい

独身や共働きであれば、
優先順位は一気に下がります。


STEP4:医療保険は「最小構成」で十分

精神科医としては、
医療保険の優先順位はかなり低めです。

理由は明確で、

  • 高額療養費制度が強力
  • 入院日額より生活費の方が重要

精神疾患では、
長期入院よりも
通院+就労不能のほうが現実的です。

医療保険は、
「気持ちの整理のために最低限」
その程度で十分です。


STEP5:余裕が出てから考えるもの

以下は、
生活防衛が完成してから検討する領域です。

  • がん保険
  • 介護保険
  • 貯蓄型保険

精神科医として強調したいのは、
不安が強い状態で契約した保険ほど後悔しやすい
という点です。


精神科医が見る「保険で人生が苦しくなる瞬間」

実際に臨床で見るのは、

  • 保険料が重く、休職できない
  • 解約すると損だと思い、身動きが取れない
  • 保険のために働き続けて倒れる

これは本末転倒です。

保険は、
人生を守るための道具であって、
人生を縛る鎖ではありません。


精神科医が勧める最小構成(まとめ)

優先順位を並べると、こうなります。

  1. 公的保障の理解
  2. 所得保障保険
  3. 収入保障保険(必要な人のみ)
  4. 医療保険(最小限)
  5. その他は余裕が出てから

この順番を守るだけで、
保険は驚くほどシンプルになります。


最後に(精神科医の本音)

保険は、
「不安だから入るもの」ではありません。

冷静なときに、最悪を想定して、最小限で備える。

それが、
心の健康を守るうえでも、
最も合理的な保険の持ち方だと考えています。

この記事が、
あなたの人生を軽くする判断材料になれば幸いです。