1. はじめに ― 今を読み解く占星術

占星術は「出生時のホロスコープ(ネイタルチャート)」を基盤にしています。しかし、人生は常に動き続けており、星々もまた空を移動し続けています。
そのため、現在の天体の配置が自分の出生図(ネイタル)にどのように影響しているかを読み解く必要があり、この技法を トランジット(経過法) と呼びます。

多くの占星術家が日常的に使用する技法であり、「今はどんなテーマが巡ってきているのか」「どの時期に注意が必要か」「どんなチャンスがあるか」を知る手がかりとなります。

本記事では以下の流れで解説していきます。

  1. トランジットとは何か
  2. トランジットチャートの作り方
  3. 読み解きの基本(天体ごとの特徴)
  4. アスペクトから見る影響
  5. 実例を交えた解説
  6. 活用上の注意点

2. トランジットとは何か?

トランジットとは、「現在運行している天体」が自分の出生図のどこに位置しているかを見る技法です。

例えば:

  • 出生図の太陽が牡羊座15度にあるとします。
  • 今日、トランジットの木星が牡羊座15度に到達した場合、出生の太陽と「コンジャンクション(0度)」を形成します。
  • その時期は拡大・成長のチャンスが訪れやすい、と解釈できるのです。

つまり、トランジットは「時間の流れ」を占星術的に捉えるためのツールなのです。


3. トランジットチャートの作り方

3-1. 必要な情報

トランジットを見るには、以下の情報を使います。

  • 出生チャート(生年月日・出生時間・出生地)
  • 調べたい日時の天体配置(現在、あるいは未来や過去の日付)

3-2. 作成手順

  1. 占星術ソフトやサイトで「現在の天体配置(トランジットチャート)」を表示
  2. 出生チャートと二重円(ダブルホイール)にする
  • 内側:出生図
  • 外側:現在の天体配置
  1. 外側の天体が内側のどのハウスに位置するかを確認

3-3. 無料で作れるサイト例

  • Astrodienst(astro.com)
  • Astro-Seek
  • 日本語なら「みんなのホロスコープ」など

これらを使えば、出生図に重ねて簡単にトランジットが出せます。


4. トランジット天体の特徴

トランジットの解釈では「天体の性質 × ハウス × アスペクト」の組み合わせを読みます。まずは各天体が象徴するテーマを整理しましょう。

4-1. 個人天体(影響は数日~数週間)

  • 太陽:その時期のテーマ、意識の焦点
  • :日々の気分、感情の流れ
  • 水星:思考・コミュニケーション
  • 金星:愛情・人間関係・金銭
  • 火星:行動力・怒り・エネルギー

4-2. 社会天体(影響は数ヶ月)

  • 木星:拡大・発展・幸運
  • 土星:課題・制限・忍耐

4-3. トランスサタニアン(影響は数年)

  • 天王星:変革・自由・突然の変化
  • 海王星:夢・直感・曖昧さ・幻想
  • 冥王星:破壊と再生・極限的変容

5. アスペクトから見る影響

トランジットの読み方で最も重要なのは 出生天体とのアスペクト です。

主なアスペクト

  • コンジャンクション(0度):強力な作用、テーマが浮き彫りになる
  • オポジション(180度):対立、調整が求められる
  • スクエア(90度):試練、葛藤、突破の課題
  • トライン(120度):自然な流れ、スムーズな発展
  • セクスタイル(60度):協力、サポート的な好機

6. 実例:トランジット木星と太陽

例として、出生図の太陽が蟹座10度にある人を想定します。

  • 2025年、木星が蟹座を通過すると、出生の太陽とコンジャンクションを形成します。
  • これは「人生の方向性に拡大の波が来る」と読めます。
  • 仕事や学びのチャンスが広がり、自信も高まりやすい時期です。

逆に土星が太陽にスクエアを取る時期なら、責任や制約が増し、忍耐が試される時期となるでしょう。


7. トランジット活用の実践法

7-1. 日記をつける

天体の動きと実際の出来事を記録することで、自分にとっての影響の出方を把握できます。

7-2. 長期スパンの計画

木星・土星・冥王星などの動きは年単位で影響するため、人生の節目や方向転換に関係しやすいです。

7-3. トランジットと他技法の併用

  • プログレス(進行法)
  • ソーラーリターン(誕生日図)
    と組み合わせるとより具体的な予測が可能です。

8. 注意点と免責

  • トランジットは「出来事を断定するもの」ではなく、「テーマやエネルギーの傾向」を示すに過ぎません。
  • 「必ず悪いことが起こる」「絶対に良いことがある」と決めつけないことが大切です。
  • 占星術は自己理解と自己成長のためのツールと捉えるのが健全です。

9. まとめと次回予告

今回のポイントを整理します。

  • トランジットは「現在の天体の配置」と「出生図」との関係を見る技法
  • 天体 × ハウス × アスペクトで解釈する
  • 個人天体は短期的、社会天体や外惑星は長期的なテーマをもたらす
  • 日記をつけて、自分だけの影響の出方を把握するのが効果的

次回(第十回)は プログレス(進行法) を取り上げます。
トランジットと並んで重要な予測技法であり、人生の内的な成長サイクルを示してくれます。


読後の感想(執筆後メモ)

トランジットは非常に奥深いテーマです。
私自身、土星のトランジットが重なった時期に「試練」と「忍耐」を強く実感しました。一方で木星が巡った時期には、不思議と出会いが増えたり、物事がスムーズに進んだ経験があります。

皆さまもぜひ、ご自身の出生図と現在の天体の動きを重ねて観察してみてください。きっと「なるほど」と思える瞬間が訪れるはずです。


⚠️ 免責事項

本記事は占星術の学習・自己理解のために執筆したものであり、人生の出来事を保証・断定するものではありません。重要な意思決定は必ずご自身の判断で行ってください。