はじめに

投資を学び始めた人にとって、「代用有価証券」という言葉は少し専門的でわかりにくく聞こえるかもしれません。しかし、これは株式やETFをすでに保有している投資家にとって資産活用の幅を大きく広げる仕組みです。

簡単に言えば、代用有価証券とは「保有している株式や投資信託などを担保にして、信用取引やFXの証拠金に充当できる制度」です。これを使えば、現金を使わずに取引余力を増やせるため、資金効率を高めることが可能です。

ただし、メリットばかりではなく、追証リスクや相場下落による資産毀損など、注意しなければならない点もあります。本記事ではその仕組み、メリット・デメリット、具体的な利用シーンまで詳しく解説します。


代用有価証券の基本仕組み

通常、信用取引やFX取引を行う際には証拠金が必要です。証拠金は現金で差し入れるのが基本ですが、証券会社によっては、保有している株式やETFを担保(代用有価証券)として差し入れることができます。

例えば以下のような流れです。

  1. 投資家が株式を証券会社に預ける
  2. 証券会社はその株式の「評価額」に一定の掛目(割引率)をかける
  3. 割引後の金額を「担保価値」として証拠金に充当

こうして担保に差し入れられた金融商品は「代用有価証券」と呼ばれます。


掛目(かけめ)の仕組み

代用有価証券は時価評価されますが、株価は常に変動するため、証券会社はリスクを考慮して掛目(割引率)を設定します。

  • 一般的な国内株式:70%〜80%程度
  • ETFやREIT:60%〜80%程度
  • 投資信託:証券会社によって可否が分かれる

具体例

例えば100万円分の株式を保有していて、掛目が70%なら担保価値は70万円です。信用取引の証拠金としてはこの70万円が使える計算になります。


メリット

代用有価証券を利用するメリットを細かく見ていきましょう。

  1. 資金効率が高まる
    株式を売却せずに担保にできるため、現金を温存したまま信用取引やFXが可能。株式の長期保有と短期トレードを両立できます。
  2. 配当や株主優待を維持できる
    代用に差し入れても、株式の配当やETFの分配金、株主優待は通常どおり受け取れます。つまり「保有資産からの収益」と「担保としての効率利用」を同時に実現できます。
  3. 新しい投資機会を逃さない
    急な相場変動で好機が訪れた時でも、現金がなくても代用有価証券があればすぐに信用建玉を作れます。
  4. 現金の流動性を確保できる
    代用を活用することで、手元の現金を他の投資や生活資金に充てる余裕が生まれます。

デメリット・リスク

一方でリスクも無視できません。特に以下の点に注意が必要です。

  1. 相場下落による担保割れリスク
    保有株が値下がりすれば担保価値も減少します。その結果、証拠金維持率が不足して追証(追加保証金)が発生する可能性があります。
  2. リスクの二重化
    株を担保にFXを行った場合、株価下落と為替損失の両方を被る可能性があり、損失が拡大するリスクがあります。
  3. 証券会社のルールに依存する
    対象銘柄や掛目は証券会社によって大きく異なります。A社で代用可能でもB社では不可能というケースも多いです。
  4. 株式売却時の影響
    代用にしている株を売却した場合、担保が消えるため信用余力が急減することがあります。その結果、強制決済が発生するリスクも。

実際の活用シーン

代用有価証券は投資スタイルによってさまざまな活用が考えられます。

  • 長期株式保有+短期トレード
    長期で持つ株を担保にして、FXや短期信用取引で追加収益を狙う。
  • 信用取引の余力確保
    株式を代用に回すことで、現金を新規株購入資金に充てながら信用取引も並行できる。
  • リスク分散型の資金管理
    一部は現金、一部は代用で担保にして、資産全体を効率的に回す。

まとめ

代用有価証券は、株式やETFといった保有資産を「眠らせずに活かす」制度です。資金効率を高める優れた方法であり、配当や優待を維持しながら新たな投資にチャレンジできる点は魅力的です。

一方で、相場下落による担保割れ・追証リスク・二重のリスク管理という落とし穴もあります。したがって、代用有価証券を利用する際は「余裕資金で行う」「損失が拡大しても耐えられる資産管理」を徹底することが不可欠です。

代用有価証券は万能ではありませんが、賢く使えば投資効率を大きく高める強力なツールとなるでしょう。