🔮 はじめに ― 占星術は「組み合わせ」で生きる

ここまでの連載では、出生図の基礎から始まり、アスペクト・ハウス、トランジットやプログレス、シナストリー、そしてコンポジットやダヴィソンに至るまで、さまざまな技法を学んできました。

しかし実際の占星術リーディングにおいては、単一の技法だけで結論を出すことはほとんどありません
コンポジットだけで「二人の関係のすべて」が分かるわけでもなく、トランジットだけで「未来のイベント」が正確に読めるわけでもありません。

占星術の本当の醍醐味は、これらの技法を 統合的に組み合わせ、全体像を浮かび上がらせること にあります。

今回の第16回では、その実践的なアプローチを「総合リーディング」として整理します。
対象は特に「関係性リーディング」――つまり二人の相性や人生の節目を読む場面です。


🌟 1. 各技法の役割を再確認する

まずは基本に立ち返り、それぞれのチャートや技法が「何を示しているか」を整理しておきましょう。

◆ コンポジットチャート

  • 計算方法:二人の惑星・感受点の中間点を取る。
  • 意味:心理的・象徴的な「二人の関係そのものの人格」。
  • :太陽コンポジット=「二人が一緒になることで生まれる人生の目的」。

◆ ダヴィソンチャート

  • 計算方法:二人の出生データから時間と場所の中間点を求め、実際のホロスコープを作成。
  • 意味:現実的な出来事・外的な展開に強く現れる。
  • :結婚・別離のタイミング、転居や子どもの誕生など。

◆ プログレス

  • 計算方法:出生後1日=1年として進行図を作成。
  • 意味:内面的な成長・関係の成熟度。
  • :月プログレスの移動で関係の雰囲気が変化する。

◆ トランジット

  • 計算方法:現在の天体の運行を出生図やコンポジットに重ねる。
  • 意味:外的イベント・出来事のタイミング。
  • :トランジット土星がコンポジット太陽に合 → 関係の試練期。

🔑 2. 総合リーディングの基本フロー

では実際にリーディングを組み立てる際、どの順番で見ていくと理解しやすいのか。
ここでは「四段階フロー」を提案します。

  1. コンポジットで核を確認する
  • 二人の関係の根本的なテーマ・方向性。
  1. ダヴィソンで現実展開を見る
  • 関係が現実社会でどう機能するのか。
  1. プログレスで成熟度を測る
  • 今の時期、二人の心理的な準備は整っているか。
  1. トランジットでタイミングを読む
  • 具体的に「いつ」「どんな出来事」が起きやすいか。

📖 3. 仮想カップルのケーススタディ

ここからは実際に仮想カップルを設定し、総合リーディングの流れを示します。
(※実在人物ではありません)

◆ 例:Aさん(1988年3月5日 東京) & Bさん(1990年7月20日 大阪)

ステップ1:コンポジット

  • 太陽:獅子座7度・第7ハウス
  • 月:蠍座15度・第10ハウス
    → 二人が共にいると「公的な関係性」を意識しやすい。結婚や社会的承認がテーマ。

ステップ2:ダヴィソン

  • 太陽:蟹座28度・第4ハウス
  • 月:天秤座12度・第6ハウス
    → 現実的には「家庭を築く流れ」が強い。だが、日常生活の調整で摩擦も出やすい。

ステップ3:プログレス

  • プログレス月が射手座に入りたて。
    → 二人の関係が「広がり・冒険・移動」を求め始めている時期。遠距離恋愛や海外転勤がテーマになる可能性。

ステップ4:トランジット

  • トランジット土星がコンポジット太陽にオポジション。
    → 関係に大きな試練が訪れている。結婚か別れかの選択。

👉 総合すると:
「二人の関係は公的に承認されやすく、現実的にも家庭を築く方向だが、ちょうど今は大きな試練期。プログレス月が拡大を求めており、土星が試すため、同居や結婚の決断が迫られている。」


🧩 4. 実際のリーディングでの注意点

  1. 一つの技法に依存しないこと
  • 例えば「トランジットで土星が来ているから絶対別れる」と断定するのは危険。
  • プログレスやコンポジットの基盤を無視すると誤解を招く。
  1. 時間軸を整理すること
  • プログレス=長期的(年単位)
  • トランジット=短期的(月・週単位)
  • 両者を組み合わせて初めて「今すぐ起きること」と「長期的に起こること」の区別がつく。
  1. 感受性のある惑星を優先的に見る
  • 太陽・月・アングル(ASC, MC)に絡むものは重要。
  • 個人天体(金星・火星)にアスペクトが集中する場合は恋愛関係の変化が顕著。

🪐 5. 応用:結婚・別離のタイミングを見る

総合リーディングは特に「結婚・別離」の節目で力を発揮します。

  • 結婚期の典型パターン
  • コンポジット月に木星がトランジット合
  • ダヴィソン太陽にプログレス金星がトライン
  • 土星が関与 → 公的承認が現実化
  • 別離期の典型パターン
  • トランジット天王星がコンポジット金星にスクエア
  • プログレス月が魚座から牡羊座へ移動(雰囲気一変)
  • ダヴィソンに冥王星絡み → 不可逆な変化

ただし「必ずそうなる」ではなく、「その時期にそのような選択が促されやすい」と理解することが大切です。


🧭 6. 読者への実践アドバイス

  1. まずは 自分と相手のコンポジットを作ってみる
  2. ダヴィソンを出して「現実面の違い」を比べる。
  3. プログレス月の位置を確認し、「関係の雰囲気の変化」を知る。
  4. トランジット土星や木星の位置をチェックし、具体的なタイミングを推測。

これを繰り返すことで、自分の占星術ノートが蓄積され、占断力が高まります


🌌 まとめ ― 総合リーディングの力

今回の総合リーディング実践編で学んだことは、次の一文に集約できます。

占星術は「部分」を学ぶ学問ではなく、「全体を統合して物語を読む」技法である。

コンポジットで「関係の人格」を知り、ダヴィソンで「現実の流れ」を確認し、プログレスで「成熟度」を測り、トランジットで「今の出来事」を読む。
これらを組み合わせることで、占星術は単なる「運勢の予測」から「人生の深い理解」へと進化します。


📌 次回予告

次回(第17回)は 「キロン ― 魂の傷と癒し」 を取り上げます。
キロンは人間関係の中で浮かび上がる「痛み」と「学び」のテーマを示し、相性占星術においても大きな意味を持ちます。


✅ 免責事項

本記事の内容は占星術的解釈の一例であり、医学的・法律的・経済的判断を保証するものではありません。
最終的な意思決定は必ずご自身の責任でお願いいたします。